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日本は周回遅れ!? 最先端の中国AIライドシェア(DiDi)の技術に迫る

まさか日本と中国がここまで差がついているとは思いませんでした。

 
中国には、ライドシェアサービスを提供している滴滴出行(DiDi Chuxing)という企業があります。DiDiは2012年に程維(Cheng Wei)という人物が創業し、2018年現在では6兆円を超えるユニコーン企業です。6兆円がどれくらいの企業価値かと言うと、日本企業では自動車メーカーの日産自動車やスズキよりも高く、またデンソーパナソニックよりも高いのです。 

今回は、今注目のDiDiについて、恐らく世界で最も進んでいるライドシェアの技術面に触れながら紹介していきます。

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スマホの次に来るもの ライドシェア

DiDiは、これまで市場を席巻してきた、PC、スマホの後に、将来はライドシェアが次のテクノロジージャイアント(GAFAなど)を創ると予測しています。
そのテクノロジージャイアントにDiDiはなろうとしているのです。 

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出所:http://d20forum.org/wp-content/uploads/2017/12/11.50_Didi_Transforming-mobility_FINAL.pdf



■Transportation 1.0 から Transportation 2.0へ

現在でもライドシェアの他に、カーシェアなどのMaaS(Mobility-as-a-Service)が普及しつつあります。従来、車は「所有」するものでしたが、それがTransportation 2.0では「シェア」するものになります。車をMaaSとして使うことで高い稼働率を実現したり、移動コストを減らしたりすることができます。さらに、車と車がつながることで渋滞の緩和も実現し、より快適な移動が可能になります。 

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出所:http://d20forum.org/wp-content/uploads/2017/12/11.50_Didi_Transforming-mobility_FINAL.pdf

 

■4.5億人以上が利用する怪物サービス

 DiDiの提供するサービスはタクシーからシェアサイクルまで多岐に渡り、乗車人数は4.5億人以上、1日の利用は2,500万回にも上ります。

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出所:AI at DiDi by Jieping Ye from DiDi


非常に利用者数が多い分、生じるデータ量も膨大です。1日に発生するデータは70TB以上、1日に処理するデータ量は4,500TBにも上ります。

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出所:AI at DiDi by Jieping Ye from DiDi

 

ここで発生するデータを活用して、DiDiは提供するサービスの質を高めています。そのサービスの根幹をなすのが「インテリジェント配車システム」です。このシステムについて、具体的に説明していきます。

 

■世界トップクラスの配車システム

インテリジェント配車システムでは車両の需要予測をした後に最適な配車をします。

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出所:AI at DiDi by Jieping Ye from DiDi

需要予測は、乗車履歴や天候データ、交通状況などをインプットデータとして予測を行っています。*1

需要予測の精度はランダムフォレストやGradient Boosting Decision Tree(GBDT)等とも比較し、結果として深層学習(Residual Network)のモデルが最も精度が良かったそうです。*2

DiDiが驚異的なのは、ここで予測した需要に対して供給を調整する方法です。
DiDiは需要がピークになると予測した時間帯に対して、パートタイムで運転手を雇ったり、運賃を変動させて需給バランスを調整しているのです、もしパートタイムの運転手を雇いきれない場合には、DiDiのプラットフォーム上の他のサービス(Mini Busなど)で調整します。ここまで需給バランスを調整可能な企業は他に存在しないのではないでしょうか。

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出所:http://d20forum.org/wp-content/uploads/2017/12/11.50_Didi_Transforming-mobility_FINAL.pdf


また、DiDiのシステムにはルート計画機能が備わっています。この機能を使うことで、運転手の稼働効率を高めたり、移動コストを最小化することができます。
さらに、目的地までの到着時間を見積もる機能も備えています。他社でも到着時間を見積もることはできますが、DiDiの予測精度は驚異的です。

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出所:AI at DiDi by Jieping Ye from DiDi

 

2015年10月の段階では、予測誤差(MAPE)は36%でしたが、2017年3月には深層学習を用いることで予測誤差を12%近くまで下げています。10分の移動であれば、約1分しか誤差がないことになります。

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出所:AI at DiDi by Jieping Ye from DiDi


次に、配車の最適化です。DiDiではグラフ理論で用いられる二部マッチング、特にハンガリアンアルゴリズムを使用しているようです。二部マッチングの中には他にも手法があるにも関わらず、なぜハンガリアンアルゴリズムを使用しているかは考察の余地があります。*3

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出所:AI at DiDi by Jieping Ye from DiDi

 

■今後のプラン 

DiDiは今後、交通インフラを巻き込んだ「交通大脳」を構築しようとしています。交通大脳とは、AI、交通データ、交通システム、クラウドを使って、交通の予測、最適化、自動化を行うものです。

交通大脳のコントロール中枢は、信号機、標識、監視カメラ、駐車場、標識、街路灯、交通警察官の投入量まで調整します。*4


これにより、道路の渋滞を評価可能になります。そして信号が変わるタイミングを最適化することができます。山東省・済南市のケースでは、344カ所の交差点がスマート化され、済南市民の通行時間を、延べ3万時間節約しています。湖北省武漢市では、滴滴出行のライドシェアデータと交通管理当局とのデータ結合に成功し、交通の誘導に成果を挙げています。現在、DiDiは20都市と取り組みを進めて、このような渋滞を改善しようとしています。*5

さらに、Didi はグローバル化の歩みを続けています。同社はアメリカでのプロジェクトを諦めビジネスを Lyft に譲った後、ブラジルの配車スタートアップである99に投資しました。また、東南アジアの Grab やインドのOla、ヨーロッパやアフリカ、その他の地域で存在感を見せる Taxify などのいくつかの配車企業とも提携してきました。*6
また、2018年9月27日には日本に進出し、大阪でサービスを開始しています。

今後も中国内でのサービス・技術の高度化を進めるとともに海外への提携も進めていくことになるでしょう。
 

 

・参考文献

www.slideshare.net

 
http://d20forum.org/wp-content/uploads/2017/12/11.50_Didi_Transforming-mobility_FINAL.pdf